ペア・フランクミュラー

フランクミュラー|カサブランカ

フランクミュラーのカサブランカ・ペアルックでのご依頼です。ここ最近何度か取り上げているのですが、絵的に面白かったので、つい載せてみたくなりました。ついでに近況など。


フランクミュラー・カサブランカ

まず小のほう。20年前に買って、子供の入学式とかごく限られたシーンでのみ着用とのことで、数回しかお使いでなかったとのこと。その間、一度だけメーカー系列にてオーバーホールした模様。特性的には全く問題なし。油は完全に乾いているものの、分解洗浄と再注油のみで済みそうなラッキー・パターン。


続いて大のほう。こちらは振り角も全然出ていなければ、特性も完全に遅れを示しており、はたしてオーバーホールのみで回復するかどうか予断を許さない状態。使わないなら使わないで、冠婚葬祭用に徹すればダメにはならない。やはり中途半端に使って、長年放置するとこうなります。


裏蓋をあけてみたところ。大のほうは自動巻。小のほうは手巻き。


自動巻ブロックをはずしたところ。

今年はまだ6月だというのに梅雨が明けてしまいました。(私の住む関東)

さらに連日の猛暑でとても6月とは思えない。最高気温とか、梅雨明け宣言とか、あれもこれも観測史上初だとか何だかの記録続きのようです。暑さで頭がぼんやりして、やる気がでない。。


ぎょえ〜。サビで埋め尽くされている!

これじゃあ歯車は正しくまわりません。

(私は暑くて頭まわりません。)

あたまふらふらんく・みゅらー。


分解したところ。お約束の切り替え車ですね。ほんとにこのパーツは少しでも手入れが悪いとすぐダメになります。最低でも5年に1回以上は定期メンテナンスが必要です。それをせず、自動巻きなのに手巻きして無理に使うとこのパーツが傷みやすいです。

自動巻きなのに、ゼンマイが巻きあがらず時計が止まる。

→ それはオーバーホールの頃合いです。すぐメンテに出しましょう。


なんじゃこりゃあ。笑

ホゾの形は確か円柱状だったはずですが。なんだかキノコみたいな形になっております。もちろんこんなものは継続使用不可ですから交換です。

しかし、よく折れなかったな。


ムーブメントはETA2892A2ベースで、パーツも同じものです。ETAの主要ムーブメントのパーツは手持ち在庫もいくらかはあります。とくに交換頻度の高いようなものは多めにストックしてあります。オメガやロレなど定番どころも少々。

あんまり他で見かけないようなめずらしい機械の入ったような時計は、この先どうなんでしょうね?

世界中あちこちでドンパチはじめそうな気配まんまんな今日この頃。

ウクライナのことは決して対岸の火事ではなく、台湾有事ともなれば次に巻き込まれるのは日本ではないかという意見もあります。ただでさえ急激な円安によりパーツを海外から入れにくくなっているところ、戦争にでもなったら手持品だけで勝負するしかありません。

そろそろオンデマンドで取り寄せは危険なので、そういうパーツ交換が必要な時計は受付やめようと思っています。


はい、新品ファクトリーパッケージと交換〜♪

めずらしい機械や希少価値の高い機械ほど、この先はパーツ交換が絶望的になりかねませんから、そういうものをこれまで同様にお使いになって万が一何かあっても、パーツを取り寄せできずにどうにもならなくなってしまう恐れが高いです。お気をつけください。


大小あわせて分解していきます。先に小のほうをやって、大はパーツケースに収めてまた明日やることに。


パーツ交換して手持ち在庫を減らすことは今後を考えると損失かも知れず。

こういう事情もあり、正常に動く時計しか【オーバーホールコース】ではお引き受けしておりません。動く時計ですら、裏蓋あけたらこんな事例はザラです。高額となるパーツ交換が必要なものは、別途に費用を加算させていただきます。


最終特性

左上)文字盤上 振り角 310° 歩度 +000 sec/day

右上)文字盤下 振り角 329° 歩度 +002 sec/day

左下1) 3時下 振り角 292° 歩度 +004 sec/day

左下2)12時下 振り角 301° 歩度 +007 sec/day

右下3) 3時上 振り角 299° 歩度 +000 sec/day

右下4)12時上 振り角 298° 歩度 -005 sec/day

大もパーツ交換ですっかり回復しました。小はもともと特性良かったので省略。

中身さえ問題なければ、ほんとに分解して洗って油差すだけなんですよ。ほかに何も特別な『技』を駆使する必要すらないです。

そういうものは、【オーバーホールコース】が最適です♪


完成。

今回のサービス:【オーバーホールコース】2台